システム開発の現場から読み解く「鶴の恩返し」

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ある日おじいさんが山を歩いていたら、バクにハマってスタックトレースに泣いているツルがいました。

鶴

そのただならぬ様子に納期が近いと推測したおじいさんは、

「これはいかん!」

とチケットを発券し、協力会社に支援を依頼したのでした。

なんとかパッチの開発はうまくいき、嬉しそうなツル。

「クエっ!」

とひと泣きし、夕日に向かって飛び立っていきました。

「バグを憎んで、ツルを憎まず」

飛び立っていくツルを見送りながら、夕日に向かっておじいさんはそう呟いたのでした。

 

それからしばらく経って、おじいさんのお家に、それはそれは美しい娘さんが訪れました。

「おじいさん、どうか私を雇い入れてください。こう見えてハタの開発プロジェクトに長年参画しており、企画から製造、テストまでひと通り経験しています」

男所帯が常の開発現場にとって、女性社員は非常に貴重な存在。
しかもアイドル級にかわいくて若い女の子とあらば、諸手を上げて賛成です。

おじいさんは早速、発注権限のある上司 (おばあさん)との面談をアレンジし、娘との契約を成立させました。

「それでは、こちらの部屋で開発してください」

請負契約であったため、請負法の抵触を懸念したおじいさんは、娘に別室で開発するよう依頼します。

「わかりました。条件としては、こちらで私が開発している間は、絶対に覗かないでください」

おじいさんは、娘が1人で開発するタイプの人間であり、周りがうるさいと集中できないタイプだと推測し、承諾しました。

娘はハタの企画から製造、テストまで全工程を回せるというのですし、おじいさんからすれば成果物が納品されれば問題ありません。

「それでは、こちらの機材を使ってください」

こうして娘は最初のプロダクトの開発に着手したのでした。

 

「おじいさん、おじいさん」

若い娘の声が聞こえます。

昨晩も協力会社との会議が長引いてそのままソファで寝こけていたおじいさんは、ゆさゆさと揺さぶられ目を開けます。

「一瞬いいですか?」

おじいさんは

(もうできたのか!?)

と内心驚きながら、

「5秒だけ待って」

と言って、机の上にあったレッドブルの飲み残しを口に含み、娘の言葉を待ちます。

「1作目のβ版ができました。開発コードは『ONGAESHI』です。これをユーザテストしてブラッシュアップを重ね、機能追加していきましょう」

どうやら娘はアジャイル開発にも詳しい様子。
スタートアップとしては申し分ない提案です。

 

早速、手渡されたハタ、開発コード『ONGAESHI』β版の受入テストを実施したおじいさんは、β版と言っても本製品と全く遜色ないクオリティであることを確認します。

「ありがとう。この品質ならリリース判定会議も問題なく通るでしょう」

上司 (おばあさん)に報告し、リリースOKとなった『ONGAESHI』をすぐさま市場に投入しました。

 

β版のテスト販売にもかかわらず、『ONGAESHI』は大好評となります。

多少の軌道修正をしながらも、開発当初のコンセプトのまま本製品の発売を迎えることになりました。

その間、オンラインによるダウンロード販売用のランディングページ開発までやってのけた娘に、おじいさんは頭が上がりません。

おじいさんは店頭のパッケージ販売からはじめるつもりだったですが、娘は先を見越してオンライン販売を提案してきたのです。

見積にランディングページ開発は含まれていなかったので、

(できる子だ!)

とおじいさんは感動しました。

娘は売る気まんまんの様子。

 

そして期待どおり、『ONGAESHI』は発売と同時に、βテストに協力してくれたユーザのツイートがバズって瞬く間に全国で売れ始めます。

すぐにYahoo!砲やグノシー砲が来るようになり、おじいさんは広報活動や受入テストでてんてこ舞い。

『ONGAESHI』の製造だけ娘に任せ、それ以外の工程はぜんぶおじいさんとおばあさんでフォローしました。

 

『ONGAESHI』は大好評で、一家総出で寝る間も惜しんで働きます。

娘は見るからに痩せてきていて、顔色がよくないところを見るに、徹夜で開発しているのではないかと心配したおじいさんは、ちゃんと休暇申請するよう娘に言うのですが・・・

「まだまだ大丈夫です」

と、モンスターを片手にいう娘の強い声に押され、ひとまず大丈夫だろうと上司 (おばあさん)にも報告しておきました。

 

ある日、朝早くからなり続けている電話に、おじいさんが応答します。

どうやらオンラインストレージがダウンしていたようで、『ONGAESHI』がダウンロードできないというお叱りの電話でした。

「オンラインでダウンロードできないなら、直ちにDVDに焼いて『ONGAESHI』をもってこい」とすごい剣幕でした。

慌てたおじいさんは上司 (おばあさん)にエスカレーションするのも忘れ、空のDVDを持って娘の部屋の扉を開けると・・・

そこには、スタンディングデスクでモンスター片手にBGMを聞きながら、カタカタやっているツルの姿がありました。

「えっ!?バグ!?!?」

バグ (虫)ではなくてツルなのですが、とにかく美少女の画像が表示されるべきケースでツルの画像が表示されているので、

(これは不具合に違いない!!結合テストの観点から抜けてたな!?)

と、開発元である協力会社に問い詰めることを考えはじめます。

早速、心ないユーザにdisられる前に緊急パッチを充てるべく、不具合チケットを発券しようと準備をはじめたおじいさん。

そんなおじいさんにツルが話しかけます。

「おじいさん、開発には口を出さないという契約でしたよね?」

「ええっ!?ツルがしゃべるなんて超やべー!?」

おじいさんは気が動転していて、現象の把握、問題の切り分けができていません。バグの続きだと思っているようです。
プロマネ失格です。

「請負法に抵触するので、これ以上おじいさんの元では働けません。監査が来る前に撤退します」

ツルはそういうと、窓を開け、夕日に向かって飛び立っていきました。

おじいさんはしばらく、呆然とその夕日を見つめていたのですが、ふと我に返って、

「発注先、逃げられた!!音信不通!!」

と叫び、何日も徹夜が続いていたおじいさんは、とうとう倒れてしまいました。

おじいさんは後日、上司 (おばあさん)から、リスク回避のため発注先を複数用意する体制づくりを怠ったなどの理由により降格を言い渡されたとさ。

おしまい。

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