「マンガでわかる管理会計: はじめてでもわかる儲けのからくり」を税理士の原尚美先生よりご提供いただけるとのことで、読んでみました。
お話をいただいたときに、「管理会計」について知りたかったのと、なにかしら実務に活かせることがあるかもしれない、と思ったからです。
当たり前だと思っていたことが、数字で計算できる
本書を読んでいて思ったのが、「当たり前」だと思っていたことが、管理会計という考え方で整理すると、数字でちゃんと計算できて、だから効果が高い、というのがわかるんだな、ということです。
例えば、
- 過去の投資にとらわれると判断を間違える
- 値引きするよりは、おまけする方が効果が高い
- コスト削減は、削減した金額以上のインパクトを利益にもたらす
- 目標どおりの原価で製造することで利益をコントロールする
などといったことです。
私はもともと大手製造業に勤めていて、製造拠点の現場改善をしていました。
業務効率化や在庫削減、物流効率化などを企画し、実行する部隊にいたんですよね。
その経験の中で、「10億円のコスト削減をすると、10億円売上を上げるより利益が大きい」とか、「標準原価の設定が大事」とか、「標準リードタイムをオーバーしている原因はなにか」とかいったことを上司や先輩から教わりながら、各工場固有の課題に取り組んでいました。
だから、なんとなくそういうものだと思っていたのですが、それがどうしてなのか、というのは突き詰めて考えられていませんでした。
直感的にそうだと思うことが、管理会計の考え方で整理すると、そうした方が利益が生まれるからだ、というのが明確になったのが面白かったです。
当時の私にこの考え方を教えてあげたいくらい (笑
管理会計は、意思決定のツール
また、本書を通じて、「管理会計というのは、先の見えないこの時代の中で、意思決定を迫られるリーダーのために役立つツールになる」というメッセージを強く感じました。
管理会計に対し、財務会計というのがあって、こっちの方が一般的に知られている会計手法になります。
というのも、個人事業主をやろうが会社をやろうが、財務会計は必須だからです。
財務会計は、税務署や株主、投資家など、社外の関係する人たち (ステークホルダー)に見せるために作るもので、普通、事業をやるとなったら、そういった関係者に財務状況を報告する義務が発生します。
そんなこともあって、財務会計は早いうちから手を出しますが、管理会計は用途が違うので、知らなければ手を出しません。
私が「管理会計」というのを知ったのはいつだったか、もはや覚えていませんが、財務会計とは大きく違うものだということを知って、すごいことを考える人がいるものだ、と思ったものです。
本書では、経営者やリーダが決断する際に使うツールとして、管理会計は役立つものだということを、いくつかの事例を踏まえながら教えてくれます。
A案とB案があって、どっちにした方がいいか、その理由は何故か、というのがかなり明確にわかるものもあり、管理会計という手法を使うよさを理解できます。
数字だけじゃない要素も大事にする
企業活動は利潤を追求するということからも、そのバロメータとしてお金というのは基本にして重要な項目です。
ただ、お金に換算できないものもたくさんあります。
例えば、それはブランドや看板のようなものや、従業員のやる気や情熱、ノリ、雰囲気といったものです。
本書の最後のメッセージとして、数字だけでは判断できないこともあって、リーダはそういうものも意思決定する際に大事にすべきだ、と書かれていました。
管理会計上で、こういう施策を打てば将来の利益がいくらになる、など見込めても、それだけだと絵に描いた餅です。場合によっては、単なる数字遊びにすらなり得ると思います。
その施策の実行を決断し、実現させるのは、あくまで経営者やリーダであり、現場のスタッフになります。
そういったリソースをどううまく活用するか、に関しては、会計スキルよりはヒューマンスキルが重要になってくることでしょう。
あまりに直感で決めすぎな人には、管理会計を一つの判断材料として使うといいし、逆に数字ばかり見ている人は、現場も見た方がいい、といったことも言えるかもしれません。
おわりに
一通り理解しながら読み進めていった中で、前半は割とスイスイ「そうだな、そうだな」と読めたのですが、後半になってくるとやや難しくなりました。
今でもまだ理解しきれていないところがあると思っていて、説明が理解できていないのか、どうしてそれがこの数式になるんだ?とか、数式が誤植じゃないよな、私の理解が足りてないだけだよね?とか思うところもあったりします。
前提となる数式や、そこで使われている数字のつながりなんかもまだ拾いきれてない感じがするので、そのあたりは時間をおいてまた見返してみたいです。
あとは、財務会計ならもう8期分?あるはずだから、当時のことを思い出しながら、固変分解したり、限界利益を求めてみたりしていくと、もう少し理解が進むかな、と思いました。
やっぱり、事業者の端くれとして、どうせだったら実務に活かしたいですからね。