「女子高生社長、ファイナンスを学ぶ がけっぷち経営奮闘記」を読みました。
確かKindle本のセールで見つけた本で、「ファイナンス (財務)」ってどういうものなんだろう?と思ったのと、小説仕立てで楽しく読めそうだと思ったので買ってみたものです。
ずいぶん塩漬けしてましたが、ふと目について読みはじめたら、面白くなって、あっという間に読み終えていました。
ここでは本書の中で、今回読んで特に私の印象に残ったことを紹介します。
アカウンティング (会計)とファイナンス (財務)を分けて考えるのは、それぞれ過去と未来を扱うから
本書ではまず、「アカウンティング (会計)」と「ファイナンス (財務)」は分けて考えるように書かれていました。
「アカウンティング」というのは、損益決算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書といった、いわゆる財務諸表を扱う世界の話で、要は会社のお金の支払いや収入を管理することです。
財務諸表は、その会社のあるタイミングの決算に基づき作成するものなので、あくまで『過去』の数字です。
これに対し、「ファイナンス」は、その企業が『将来』生み出すキャッシュフローを扱います。
つまり、「アカウンティング」は過去の数字を扱い、「ファイナンス」は未来の数字を扱う、という点で、区別して考えるものだということなのでしょう。
ファイナンスは、特にキャッシュ (現金)に焦点を絞っているため、会社の利益と違って嘘はつけないし、キャッシュを生み出す経営をするのに役立つものだそうです。
お金の価値は、受け取るタイミングで変わる
本書に書かれていたことで、確かにそうだ!と思ったことがありました。
それは、
お金の価値は、そのお金をいつ受け取るかで変わる
ということです。
私自身、規模は小さいながらも個人事業主として事業を7年もやっていると、このことは身にしみて思います。
例えば、借金をしていたとして、今月10万円を返済しなくてはいけない状況において、
- A. 今月手に入る10万円
- B. 1年後に手に入る10万円
は、同じ価値でしょうか?額面としては同じ「10万円」ですが。
当然のことながら、この2択だと、「A. 今月10万円」には10万円の価値がありますが、「B. 1年後に手に入る10万円」は10万円の価値がありません。
今月の借金が返せないなら倒産するという状況だと、1年後にはその会社は残ってないので、そのころにポロッと10万円が出てきても受け取ることができません=無価値ですよね (すごく単純に例えていますので、細かいことは無視してください)
もう少しいうと、今月の10万円を返済するために、どこかからお金を借りて来て返すとしたら、「C. 借りてきた10万円」は10万円以上の価値がある、という判断になります。
なぜなら、借りてきたお金は利子がつくので、その利息分の支払いをしてでも、今10万円が欲しい、ということなのですから。
利息を年10%としたら、来年11万円払うことになるのですが、来年11万円払ってでも、今10万円が欲しいのです。
こんな風に、今受け取る (あるいは支出する)お金と、将来受け取る (あるいは支出する)お金は、額面が同じだったとしても価値が違う、のです。
ファイナンスでは、将来生み出すキャッシュも、現在の価値に置き換えて価値を算出するそうです。
細かい算式はところどころ出ていましたが、細かくは追っていません。本書を読んだのは「ファイナンスって何?」を知るのが目的だったので。
そして、将来生み出すキャッシュを現在の価値に置き換えることで、その価格は妥当なのか、高いのか、安いのか、というのを判断することができるようになります。
要は、投資判断の材料になるということですね。
会社員で言えば、「まあ、これくらいいいかー!」なんてちょっぴり高い買い物をしちゃうことってあるじゃないですか。
それは無意識に、向こう数ヶ月の給与を当てにして、「その価格なら買っても大丈夫」という判断をしている、と言えそうです。
で、その判断がよく間違っている人は金欠になるわけです (将来のキャッシュフローが正しく評価できてないため)。
将来のキャッシュフローを考えるときに、過去支払った費用は関係ない
ファイナンスは将来のキャッシュフローを扱うと書きました。
ファイナンスは将来のキャッシュフローを扱うため、過去に支払った費用は考えなくてもよいのです。
私たちはよく、過去に支払ったものに対して価値を過剰に感じがちですよね。
これだけやってきたんだから、もう少しやったら成果が出るんじゃないかって思ってやるとか。
こういうのを「サンクコスト」とか言ったりします。
作りかけの報告書、1から書き直した方がもっといいものできるかもしれませんよ?
でも、作りかけちゃったから、それをなんとかしたいし、使わないにしても取っておきたくなるのが心情です。
そうして気がついたらパソコンの中にはいつ、どこまで手をつけたのかわからない資料がわんさかあったりして。
昔買ったモノを後生大事にしていることで、押し入れにモノが溢れている、なんてこともよくあることです。
そういうの一旦無視して、なかったことにして、これからよりよくなるためにはどうすべきか、「未来」に目を向けて考えましょう、ということです。
経済的に豊かになる
「経済的豊かさ」について、本書にはこう簡潔に書かれていました。
支払う価格よりも価値の高いものを手に入れ続けることが、経済的に豊かになるということです。
経済活動というのは、価値と価格の交換によって成り立っています。
だから、
- 価値 >> 価格
であればハッピーになれるし、
- 価値 << 価格
であれば損した気分になるものです。
経済的に豊かになるって、1,000万円稼ぐとか、1億円持っているとか、そういうことじゃないってことです。
例えば、我が家で作る唐揚げは絶品で、1,000円分 (800gくらい?)揚げてもあっという間になくなります。すごく幸せな気持ちになります。
ただ、高速道路のパーキングエリアなんかで1,000円出して食べる唐揚げ定食が、量も少なくて、味も大したことなかったら、とっても残念な気持ちになります。
事業で言えば、1,000万円の価値があるものに100万円だったら喜んで出しますが、5,000万円出すのは馬鹿げていますよね。
「経済的に豊かってどういうことだろう?」という問いに対する、ひとつの答えが「支払う価格よりも価値の高いものを手に入れ続けること」なんだと思います。
おわりに
本書を読んで、ファイナンスという考え方の面白さがわかった感じがします。
私なりの理解では、ファイナンスは現金を生み出すための思考法なんだなってことです。
現時点で、だからといって具体的に私の事業において何をどうしようとか、実際の数字でどう計算しようとかいうのまでは追いかけるつもりがないですが、将来のキャッシュフローに焦点を当てる、という考え方を知ったことがよかったです。
ファイナンスってなんだろう?というのを掴むには、わかりやすい本だったと思います。
あと、出版社が舞台なので、出版業界のことが少しでもわかるのもいいかもしれません。
楽しく読めそうだと思って買って、実際に楽しく読めたこともよかったです。
ビジネスマンの一般教養として、ファイナンスは知っておくと役に立ちそうです。