久しぶりに一気読みしたビジネス書でした。
「読みたいことを、書けばいい。」
前々からタイトルだけでちょっと気になっていて、買ったあと積ん読になっていたのですが、読みはじめたら面白くなって最後まで一気に読んじゃいました。
本書で気になっていたのは、まず、「読みたいことを、書けばいい。」って一体どういうことなんだろう?ということです。
あと、「自分が読みたいと思えるような文章を書く」ためにはどうしたらいいんだろう?などと思いながら読んでいました。
読んでみてわかったのは、思ったより文章量は少なかったことと、「これは筆者が書きたかったから書いたんだろうなー」と思うことが随所に書かれていたことです。
その「書きたかったこと」というのが、筆者自身が「読みたかったこと」なのでしょう。
この文章を読んで、筆者は自分でニヤニヤしていたのかなー、なんて想像しながら読んでいました。
ファクト大事!
じゃあ、本書の内容が軽いものだったかというと、そんなことはなかったです。
しっかり入念に調べている、という印象があります。
筆者も、
書くという行為において最も重要なことはファクトである。
と書いています。
これまで筆者が書いてきたコラムを紹介したり、読んだ本の紹介をしたりしていて、その引用が私的にはすごくよかった。
思わず筆者の書いてきたコラムを読み漁ってしまいましたし、紹介されている本はチェックしました。
このコラムとか。
コラムを読むとわかるのですが、ふざけているように見えて本当に真面目に調べているんです。これが。
なるほど、ファクト大事。勉強になります。
随筆の定義
それから、随筆です。随筆。
私は「随筆」というのがどういうジャンルの文章なのかよくわかっていませんでしたが、本書を読んで「そういうものだったのか!」と膝をたたきました。嘘です。本当はたたいていません。
ファクトなどの事象を見聞きして、それに対して思ったことや考えたことを書くのが随筆なのだそうです。
そう言われると、普段から読んでいる、ほとんどのWeb上の文章は随筆なんだと思いました。
Macを買った。すごいよかった。iPhoneを買った。すごいよかった。どこそこでなになにを食べた。すごいよかった。
こんな文章が溢れていますよね。すごいよかった。
こういうの、全部随筆だそうです。筆者いわく。
つまり、私が今ここで書いている文章も随筆です。
本書に出会って、思ったことや考えたことを書いてます。
だから、この随筆の定義を忘れてはいけません。忘れると随筆とは別のものになってしまいます。
筆者が言う「随筆」の定義は、
事実と心象が交わるところに生まれる文章
です。
事実に寄り過ぎると別のものになるし、心象に寄り過ぎるとまた別のものになってしまいます。
事実に寄ると新聞記事などになるし、心象に寄ると詩などになります。
随筆はその間なんですね。
個人ブログを読み物として考えると、事実に寄り過ぎると新聞社には負けるし、心象に寄り過ぎると小説に負けます。
だから、個人ブログはちょうどその間くらいの立ち位置=随筆がいいんだろうな、ということを改めて思いました。
自分が面白いと思うのが幸せ
ただ、そうやって色々考えながら書いていると、文章がだんだん面白くなくなってきます。
誰が?書いている自分が、です。
筆者が訴えているのは、書いている自分が読んで、ニヤニヤしたり、ププっと吹き出したりできたら、それだけで幸せなんだよ、ということです。
中には「お金を儲けるためにやってるんだから、そんな自分が楽しむだけの文章なんて書いている暇はない」という人もいることでしょう。
ただ、最初に読む読者である自分すら楽しくない文章は、誰のためのものでしょう。
筆者からすると、
自分で読んでおもしろくなければ、書くこと自体が無駄になる。
とのことです。
なんか、最近そういう気持ちで文章を書けているかな、と思いました。
どこか、取り繕ったところあるなー、というか・・・
うまく表現できないですが、自分が面白いと思える文章が書けているか?という問いかけは、私の中に強烈に残りました。
随筆の定義を意識する
だからといって、いきなり「自分が面白いと思う文章を書くぞ」といきりたっても、何をしたらいいか検討がつきません。
私の場合は、放っておくと事象よりになりがちな気がするので、もっと心象の方を増やすことは意識するとよいのかもしれない、というのは思いました。
そう思うと、「随筆の定義」を意識することは、私にとっていいのかもしれません。
「随筆の定義」というのは、
事実と心象が交わるところに生まれる文章
でしたね。
あと、読んだ人が意味がわからなくても、「だって、書きたかったんだもん」というのを書き加えることもやってみるといいのかもしれません。
そうしているうちに、文章にも味が出てきて、私の文章になっていくのかなー、なんてのを思いました。
おわりに
普通だったら「読みたいことを、書けばいい。」なんて言われたら、「そんな文章、誰が読むんだよ」という反応が返ってきそうなものです。
ただ、そのレベルも一定値を超えるといろいろな人の目に止まる文章になるのだと思います。
最初から、自分でも読みたいと思えない文章を書くのって、つまらないですものね。
仕事の報告書なんて2度と読みたいものじゃなかったりしますが、そういう文章をどんどん書いてるようだと、だんだん文章から遠ざかっていきそうです。
その文章の、最初の読者である自分が、その文章を楽しめているかって、たぶん忘れてはいけないことです。
本書を読んで、初心に返るというか、昔は自分が楽しくて書き物してたなーというのを思い出しました。
書くことに疲れている人には、ぜひ読んでみて欲しい本です。