私のコーチングの師匠のひとり、谷口貴彦さんの新刊「勝ち続ける選手をそだてる最高峰の技術」を読みました。
谷口さんは株式会社コーチ・セブンピース代表であり、国際コーチ連盟 マスター認定コーチです。
本書では、主にスポーツ界のコーチの方に向けて、選手の能力を伸ばしていくための、チームとして競技に勝っていくための「新しい指導スタイル」について書かれています。
例えば、
- どのように選手とコミュニケーションをとったらいいか
- どういうことを大事にすべきか
- どうすればコーチと選手の間で効果的な関係を作り上げていけるか
- どうすれば選手の個性や能力を最大限発揮していけるか
などといったことについて具体的に書かれています。
その真髄は、谷口さんをはじめとするプロコーチがやっていることを、スポーツ界でも愚直に実践することだ、ということが書かれていると私は感じました。
本書の中には、そのアイデアがいくつもあります。
ここでは、本書を読みながら私の意識に止まったポイントや、重要だと思ったポイントについて紹介します。
相手に合わせた個別対応のコミュニケーションをとる
相手に合わせたコミュニケーションを取れるといい、というのは誰しも思っていることだと思います。
ただ、じゃあどうやったらそれができるのか、というのについてはほとんどうまく説明されてはいない感じがします。
もちろん、「これひとつ知ってれば完璧!」というものはありませんけどね。
そんな中でも、比較的有効な「優位感覚」別コミュニケーションについて本書では書かれています。
「優位感覚」というのは、
- 視覚
- 言語感覚
- 触覚
- 聴覚
といった、人間の五感に基づく分類です。
これらの感覚のうち、どの感覚を主に使って情報処理しているか、ということに着眼点があります。
NLPをやっている人なら、「優先的代表システム」などと言ってとことんやっているはずのものです。
このタイプによってコミュニケーションの取り方を変えると、これまで伝わらなかったことが、急に伝わるようになったりします。
こうした特性に合わせた話し方をすることで、相手に合わせた、個別対応のコミュニケーションが取れるようになります。
「問い」を立てながら聞く
相手の話を聞くときに意識したいポイントとして、「「問い」を立てながら聞く」というのがあります。
人の脳は「問い」を立てると答えようとします。
その力を利用するのです。
「問い」には非常に有効なものもあれば、全く意味をなさないものもあったりして、とても奥が深いです。
こちらの記事でもそんな「問い」のことについて書いています。
お互いが本心から納得できた状態になる
コーチングがうまく機能する条件として、「お互いが本心から納得できた状態になる」というのがあります。
「同意を取り交わす」と谷口さんはよく言ってます。
選手とコーチはつい上下関係になりがちではないでしょうか。
両者の間でちゃんと話し合って、お互いに期待することや、お互いの役割、責任の範囲、ルール、目標、目指す場所などを事前に決めておきましょう、ということです。
これをしないで「選手」とか「コーチ」とかいう関係を作ろうとすると、例えば、
- 選手というのはこういうものだ、こうあるべきだ
という「コーチ」の思い込みで選手を潰すかもしれませんし、
- コーチはこういうことをしてくれるはずだ
という「選手」の思い込みで、いつまでたっても選手の目的は達成されないかもしれません。
まずは同意を取り交わし、それから指導を行いましょう。
そして、お互いに「何か違う」と思ったら改めて同意を取り交わしましょう。
「P」と「PC」を底上げしていく
コーチは何をしているか?というと、まさに「P」と「PC」を底上げしていくということをしています。
これについては別の記事で詳しく書いているので、そちらの記事を参考にしてください。
社会に大きな価値を与えられる人間になるための能力開発
本書で伝えているような、プロコーチが普段やっていることをスポーツ界のコーチが当たり前のように使い、選手を育てると、選手もそういう育て方を覚えることになります。
そして、選手としてもコーチングという手法を学ぶことで、次世代に伝えていく力を持つようになります。
すると、選手たちはスポーツを引退してからも、社会に大きな価値を与えられるようになります。
そのためのメソッドが、本書で訴えている「スポーツコミュニケーション」メソッドです。
おわりに
本書は少ない文字数の中で、谷口さんが普段セミナーなどで言っていることのエッセンスがうまくまとめられていると思いました。
読んでいると、「ああ、あのとき谷口さんが言ってたことだなー」などと思い出します。
スポーツ界を対象としているのですが、やることはいわゆる王道のコーチングです。
プロコーチがやっていることを、そのままスポーツ界にも適用することができれば、もっともっと選手を活かすことができるコーチが多数出てくるんじゃないか、という谷口さんの想いを感じました。
新米コーチの方や、町の少年野球団のコーチの方、学校の先生など、人を指導する立場にある人にはお勧めできる1冊です。