ビジネスにおいて、情報の5W1Hを明確にすることの重要性はここで語るまでもないでしょう。
What, Why, Who, When, Where, Howというやつですね。
あと5W2Hとして、最後に How much を入れる人もいるでしょう。
もちろん、この情報を明確にするための5W1Hも重要なのですが、コーチングをする際にはそうじゃない観点の5W1Hの方がはるかに重要になってきます。
5W1Hを明確にする
ビジネスで言われている5W1Hというのは、あくまで、話している情報の抜け漏れというところにフォーカスしています。
誰が、いつ、どこで、何を、どのようにして、・・・というのは、全部、「話の内容」です。
言うなれば、その人が「何を話しているのか」です。
そう。これは、人と人が対話している全体像の中で言うと、あくまでWhatでしか無いのです。
What (何を話しているか)
その人が「何を話しているのか」は、実のところほとんど重要ではありません。
よく子どもが他人を罵るときに、「バーカ、バーカ」とか「お前の母ちゃん出ベソ」とか言ったりするわけです (もうそういう子はいないですかね?)
これ、「何を話しているのか」にフォーカスすると、全く意味をなしていません。
こちらが馬鹿にされる立場だったとして、自分が馬鹿かはそいつに判断されることではないです。私は意外に頭がいいかもしれません。
「母親の出ベソ疑惑」なんて言いがかりでしかないですね。そいつは私の母親と裸の関係でもあるというのでしょうか?
こういう場合って、「死ねばいいのに」でもいいし、「おたんこなす!」でもいいし、「やーい、やーい」でもいいのです。
つまりは、言っている内容自体 (=What)にほとんど意味なんてないってことです。
Why (なぜその話をしているのか)
では、そいつはなぜその話をしているのでしょうか?
あなたが何かしたことが、彼/彼女は気に入らなかったのかもしれません。
嫉妬しているのかもしれないし、彼/彼女の理解を超えていたのかもしれません。
何かしら、「その人がその場でその話をする背景」があるのです。
そのことを考えることに価値はあります。
ただ、これも重要な観点なのですが、何かしらの課題を解決しようとしたときにはあまり役に立ちません。
ついつい私たちは「なぜなぜ分析」をしがちです。
ですが、「どうして今私は幸せじゃないのだろう」と考えるより、「どうやったら私は幸せになるのだろう」と考えた方が健全で、建設的なアイデアが出てくるからです。
How (どのように話しているか)
最も重要なのが、彼/彼女がどのように話しているか、です。
Whatのところで書きましたが、「バーカ、バーカ」とか「お前の母ちゃん出ベソ」という言葉そのものには何の意味もありません。
舌を出していたり、そいつが自分の尻を叩いていたり、石を投げてきていたりすることの方が情報価値が高いです。
顔を真っ赤にしているとか、肩が震えているとか、声を荒らげているとか、そういうものが、「怒り」や「バカにしている感」、あるいは「屈辱を感じていること」を周りに伝えているのです。
そういうときは、腕を組んだり、足を組んだり、上を向いたり・・・何か特徴的な行動をすることが多いです。
文字として「バーカ、バーカ」とか「お前の母ちゃん出ベソ」というのを見ても、特に何も感じないですよね?
つまりは、「何を言っているか」はほとんど意味がなくて、「どのように言っているか」がすべてを語っているということなのです。
「怒り」「悲しみ」「喜び」「愛情」などなど、本当に重要な情報はどのように話しているかに現れています。
カウンセリングやコーチングをするときは、ここに着目します。
何を話しているか、ではなく、どのように話しているか、が重要なのです。
Who, When, Where
その人がどういう状況で、どういうスタンスで、どういう環境において話しているか、というのも知っておくといいでしょう。
彼/彼女は家庭環境に何かしら事情があるのかもしれません。
単に機嫌が悪い日だったのかもしれません。
たまたまあなたが目の前にいたから、ぶちまけただけかもしれません。
相手の言うことにショックを受けたり、悲しくなっちゃったりするかもしれませんが、そういったことを考えてみると、実は大したことは起こっていないことに気づくことでしょう。
ここに着目すると、案外冷静になれることがあります。
おわりに
「人の話を聴く」という観点から見た5W1Hについて書いてみました。
結局のところ、「何を言っているか (=What)」より「どのように言っているか (=How)」の方がはるかに、はるかに重要、ということです。
私たちはついついWhatに振り回されがちなのです。
彼/彼女が「何を言った」と、言ったことに対して反応したりしていないでしょうか。
が、そこはある程度無視してもいいところだったりします。
Howに意識を向けてください。
彼/彼女がどのように話しているかに目を向けましょう。
その方が嘘偽りのない本当の情報を得やすいからです。
「人の話を聴く」本質は、この「Howに意識を向ける」ことだと言ってもいいでしょう。
ついつい言葉尻にカッとなっちゃうような人は、特にこういう意識でいた方がうまくいくでしょう。